HEAT20 G2グレードの住宅の暖かさを検証
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Heat20とは?
Heat20とは、「一般社団法人 20年先を見据えた日本の高断熱住宅研究会」の略称で、主に住宅建築について研究を行っている大学教授や、建築研究関係機関の主要な人物からなる団体のことです。
主な目的として
低環境負荷・安心安全・高品質な住宅・建築(以下、住宅等と称す)の実現のため、主として居住空間の温熱環境・エネルギー性能、建築耐久性の観点から、外皮技術をはじめとする設計・技術に関する調査研究・技術開発と普及定着を図ることを目的とする。
HEAT20
を掲げていて、これからの日本の住宅があるべき「断熱水準」を規定したりしている。
民間の団体とは言え、その組織体制から公的な要素が強く、新たな日本の基準を作る際、こちらの組織が提唱する断熱性能が参考にされている。
住宅水準 G1・G2・G3とは?
Heat20では、今後日本の住宅が目指すべき断熱性能の水準として、G1・G2・G3性能が規定されています。
建物の断熱性能は、外皮平均熱還流率\(U_A\)値と言うもので表現される。この値は、数字が低ければ低いほど断熱性能が高いことを意味し、その場所の気候に応じて1~7地域に分けて、以下のように基準が定められています。
(あなたの住んでいる場所の地域区分が知りたい場合は、「地域の区分・年間の日射地域区分・暖房期の日射地域区分検索ツール」をダウンロードして探してみて下さい。)
地域の区分 | 1・2地域 | 3地域 | 4地域 | 5地域 | 6地域 | 7地域 | |
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代表都市 | 札幌 | 盛岡 | 松本 | 宇都宮 | 東京 | 鹿児島 | |
外皮性能水準別 外皮平均熱貫流率UA> [W/(m2・K)] |
平成28年基準 | 0.46 | 0.56 | 0.75 | 0.87 | 0.87 | 0.87 |
G1水準 | 0.34 | 0.38 | 0.46 | 0.48 | 0.56 | 0.56 | |
G2水準 | 0.28 | 0.28 | 0.34 | 0.34 | 0.46 | 0.46 | |
G3水準 | 0.20 | 0.20 | 0.23 | 0.23 | 0.26 | 0.26 |
そして、それぞれの断熱性能は暖房していない部屋の最低室温を基に以下のような目安で計算によって決められています。室温となっていますが、実際には作用温度\(OT\)と言って、体感温度で決められています。
- G1:1・2地域では10\(~ ^\circ\)\(C\)を下回らない。それ以外の地域では8℃を下回らない。
- G2:1・2地域では15\(~ ^\circ\)\(C\)を下回らない。それ以外の地域では13℃を下回らない。
- G3:1・2地域では16\(~ ^\circ\)\(C\)を下回らない。7地域では16℃、それ以外の地域では15℃を下回らない。
温度で示すと、あまりピンと来ないかもしれません。大阪や東京では大体冬の外の気温が7\(~ ^\circ\)\(C\)程度です。冷蔵庫の中なども7℃設定になっていることが多いです。
例えば、大阪でG2であれば少なくとも冬場に外の気温より寒くなることは殆ど無くなることを示します。
しかし、実際にはG2性能の住宅を建てるともっと暖かく過ごすことが可能となります。(費用対効果も最も高くなります。それはこちら「夏も冬も快適に過ごすための断熱G2性能とパッシブ設計」で紹介しています。)
今回は、そのことについて弊社が手掛けたG2性能住宅の実測を基にご紹介したいと思います。
実際のG2住宅の本当の暖かさ
こちらは、兵庫県の淡路島にある\(U_A\)\(0.40\)の建物です。大きな吹抜けがあり大きな窓開口があるので、普通で考えるととても寒くなりそうです。
【計算上の最低温度を見てみよう】
ここで、Heat20が提供する「外皮水準地域補正ツール」と言うものでこの建物の計算上の最低温度を算出してみます。その結果が以下です。
この計算結果を見ると、一番左の①の当該仕様を見ると、暖房していない部屋で最低の温度が14.2\(~ ^\circ\)\(C\)になることを示しています。これは部分間欠暖房と言って、24時間暖房するのではなく、定期的に暖房したり、しなかったりを繰り返した場合の計算結果となっています。
【この冬に測定した実際の最低温度】
次に、2022年2月にこの家を実際に測定した結果です。この期間の外の気温は平均して5.4\(~ ^\circ\)\(C\)でとても寒い日が続きました。
エアコンの設定温度は22\(~ ^\circ\)\(C\)で、リビングで1台だけ稼働していました。このグラフでは、エアコンが定期的に暖房していない時間帯があることが分かります(青い線)。特に2/8、2/9、2/15は半日かそれ以上は暖房していません。
そんな中、オレンジ色のRoomBに注目して下さい。この部屋は暖房をしていない部屋です。暖房していないにも関わらず、部屋の温度が15\(~ ^\circ\)\(C\)どころか、20\(~ ^\circ\)\(C\)を切ることも一度も無いことが分かります。
つまり、計算を遥かに上回る室温が維持されていることが分かります。
20\(~ ^\circ\)\(C\)と言えば、小春日和の温度となります。22\(~ ^\circ\)\(C\)設定のエアコン暖房で、実際に殆どが22\(~ ^\circ\)\(C\)以上という事は、冬の間も殆どが春以上の暖かさで過ごせることになるのです。
【計算と実際の違いは何か?】
一般的に計算は「安全側」と言って、性能が過剰に表現されないように計算されることが殆どです。恐らく、Heat20による計算の方法も詳細は公開されていませんが、いくつかの「安全」をみて計算されているものと思われます。
予想では”内部発熱”と呼ばれる人体や家電から発せられる熱や、日射取得と言われる(主に窓から入って来る)太陽からの熱の取得については加味されていないのだと思われます。その違いが大きいため、このような差が出ていると考えるのが自然でしょう。ただ、単に違いだけを言うと大学の先生方に怒られそうです(;^_^A
とはいえ、実際の生活では内部発熱はどの家でもあるものですし、日射取得についても少なからずあります。なので、実際のG2住宅に住んでみるとHeat20が示している体感温度以上の快適さがあることは間違い無さそうです。
本当の暖かさまで考慮するのがパッシブ設計
実際の設計では、その家がどの程度まで暖かく過ごすことが出来るのかを実際に示すことが出来る方が住む側にとっても良いと思います。
ここで大切になってくるのがパッシブ設計です。
このパッシブ設計では、先ほどのHeat20では計算に入れていないであろう太陽からの熱の取得量や人間や家電からの発熱量なども加味して設計を行います。
このため、もう少し実際の室温に近い値の計算結果を出すことが可能となるのです。
そして、太陽から入って来る熱の量が事前に分かっていれば、その分、必要な窓の大きさを考えたり、事前の暖房計画を最低限にしたりすることが可能になります。
また、入って来る熱がどの季節にどこからどの程度なのかを分かって入れば、間取りの設計に活かすことも可能です。
こうして、計算と設計をリンクさせる設計こそが本当のパッシブ設計と言えるのです。
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